2015年06月30日

平成イソップ物語 11: 白蛇と黒蛇

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昔々、ある草原に白蛇と黒蛇が住んでいました。
白蛇には毒がありませんが黒蛇は毒を持っていました。



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ある時、白蛇達は集まって相談しました。
「毒牙があれば我々も強くなれるぞ!」
「我々も毒牙が必要だ!」

皆は神様の所に行きました。
「神様、我々にも毒牙を下さい」

神様は答えました。
「皆の望みを叶えても良いが、きっと後悔することになるから、待っていなさい」

納得できない白蛇達は、タールの池に体を浸け、真っ黒に変身しました。
「これで我々も身を守れるぞ!」

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それから月日が流れ、人間達が草原にやって来ました。

黒く変身した白蛇達は慌てました。
「人間達は、毒牙を持った黒蛇を手当たり次第に殺しているぞ!」
「このままじゃ我々も殺されるぞ!」
「皆、黒くなった皮を早く脱ごう!」

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< 4. 脱皮 >

黒蛇は皆、殺されてしまい、黒い皮を脱ぐのが間に合わなかった白蛇も殺されてしまいました。


生き残った白蛇がつぶやきました。
「何が身を守るかは、先の先まで読まないとわからないね」



ラベル: 寓話
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2015年06月28日

自然を撮る 6: 高原の夏

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< 1. 長野県八島湿原9月 >

知人が提供してくれた写真を紹介します。
今日は、夏が訪れた日本の高原を紹介します。


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< 2. 車山高原6月 >
ツツジが一面に咲く高原の向こうに残雪を頂いたアルプスが見えます。

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< 3. 車山高原7月 >
やがて朝陽が高原に夏の熱気をもたらし始めます。




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< 4. 車山高原7月 >
溢れんばかりの陽光が、この緑の斜面に届くのだろうか。



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< 5. 茅野市8月>
この木立の間に白馬が写っていたら、まるで東山魁夷の絵「緑響く」の世界です。
いかにも日本の風景、淡い水墨画の趣があります。

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< 6. 山梨県北社市8月 >
夏の盛りを一気に駆け下る深山幽谷の流れ。


ラベル:自然 観光 季節
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2015年06月26日

ピケティの資本論 30: あとがき

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今回は、この連載を終えるにあたり、気になることを記します。
どうも長い間、お付き合い頂きありがとうございました。





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< グラフ2.ピケティの「21世紀の資本」より >

このグラフに日本が選択を誤った背景が見えます。
グラフ中の赤枠(1900〜1930年)と黄枠(1930年〜)を見てください。
地域間で経済力の逆転が生じています。

かつて、日本が大陸進出を始め、米国との戦争を意識し出したのは1900年から1920年代にかけてでした。
当時、欧州が世界をリードしており、米国が強大になりつつあることを認識する人は少なかった。
しかし、両者の経済力は着実に逆転しつつありました。

1930年代、独裁者ヒトラー率いるドイツは隣国を侵略し始め、勢いは増すばかりでした。
こうして日本は米国を牽制する為に、快進撃を続けるドイツと軍事同盟(集団自衛)を結びました。
この結果は、皆さんご存じの通りです。


同じグラフ2の別の赤枠(1980〜2010年)を見て下さい。
アジアとアメリカで同様の逆転が起きています。
同じ轍を踏む心配はないでしょうか。


日本で起きていること
最近、北朝鮮が潜水艦からのミサイル発射に成功させた報道がありました。
以前「私達の戦争 44」で指摘しましたが、日本海や太平洋からミサイル攻撃があると、日本のミサイル防衛はたちまち役に立たなくなります。
これは米ソの核開発競争でも実際に起きたことです。
これを受けて米ソは敵視しながらも話し合い、膨大な核開発競争へと移行しなければならなかったのです。
歴史は繰り返しているのです。
今回は北朝鮮の偽装かも知れませんが、いずれ現実になるでしょう。

人は見たくないものは見えないが、恐怖に駆られると見えないものが見えるようです。


現在、日本の国政選挙で一票の格差が問題になっています。
1996年に、全国の選挙区の最大格差は6.6倍がありました。
ある選挙区の人の意向は、他の7分の一の価値しかないのです。
これがどのぐらいまで是正されれば、私たちは平等と言えるのでしょうか?
最大3倍以下、2倍以下、それとも1.1倍以下でしょうか?

それでは経済格差はどのくらいが許容範囲でしょうか?
10000000倍、10000倍以下、それとも100倍以下でしょうか?

経済格差は伝染病のようなものです。
伝染病の蔓延を放置していると取り返しのつかないことになります。
富が権力と癒着し社会が疲弊し、やがて崩壊に至る例は歴史に繰り返されています。
私たちは未来の為に、拡大を防止し、その根(病原菌)を押さえ込む必要があります。


皆さんも、ピケティの「21世紀の資本」をお読みになることをお奨めします。

歴史を学び、現実を直視すれば、大きく未来を踏み外すことはないでしょう。

どうも御拝読ありがとうございました。




posted by 学 at 06:29| 兵庫 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連載完 ピケティの資本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月23日

ピケティの資本論 29: 著書「21世紀の資本」から学んだこと


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< グラフ1.ピケティの「21世紀の資本」より >


著書「21世紀の資本」から学んだことをまとめます。
今回で、この連載を終了します。


はじめに

私は最初、ピケティの著書「21世紀の資本」を解説する前に、少し入門編を書くつもりでした。
しかしピケティの論点に多く触れることになりましたので、この連載は終わります。


私が著書から学んだこと

A. 現在の格差拡大のメカニズム。
資本の収益率(4〜5%)が労働所得の成長率(=経済成長率1〜2%)を凌ぎ、国富に占める資本(遺産も)の割合は増え続ける。

今後も続く人口減が低成長を確実にする。
また資本の収益率は、大量の貨幣供給(金融緩和)により上がりこそすれ低下することはない。
この2点は現実に起こっているが、立証されていないかもしれない。
さらに集中する資産は、消費されずに益々増大に加速度がつく。

B. 国民資産の多くは一部の富裕層に集中し増加傾向にある。
A項で説明した要因と、恣意的な高額所得の増大により、グラフ1のごとく欧米において上位10%が国富の63〜72%を所有しており、上昇し続けている。

そして世界の富もごく少数の富裕層に集中する傾向にある。 
これが格差の現実であり、そのメカニズムは世界に浸透している。


C. 格差が縮小した時期がある。
グラフ1のごとく、1910から1970年の間。
これは戦争、高度経済成長の影響もあるが、累進所得税の施行が効いた。
つまり、英米が率先して革新的な政策を実施し、かつ世界各国がそれに準じたのです。
まさに、今の逆パターンでした。

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< グラフ2.ピケティの「21世紀の資本」より >

D. 先進国の国民資産がGDPの4〜6倍になり、拡大傾向にある。 
ここ半世紀、英米仏の住宅資産が国民資本の40〜60%を占めるようになり、国民は豊かになった。
ただ、最上位所得層ほど住宅資産の割合は少ないだろう。

これだけの富があるなら、財政赤字解消を先送りにする必要はない。
つまり、低所得層を直撃する間接税ではなく、富裕層から資産税を徴収すれば、赤字も格差拡大も防げる。

E. 私は格差について論ずる自信が持てた。
以前は、格差を指摘する側にも偏向があるのではないかと半信半疑であった。
しかし格差、資本、賃金の歴史的な推移と政治的な背景を知って理解が深まった。


次回、雑感を書き、最後とします。

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2015年06月20日

ピケティの資本論 28: グローバル化を越えて 3

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前回、グローバル化は自然の流れであり、かつグローバル化の反動は起こり易く危険であることも見ました。
私達はどうすれば良いのでしょうか?

はじめに

ギリシャ神話によると、プロメテウス神は天上の火を盗み人間に与えた。
この火は人間に恩恵と弊害、どちらをもたらしたのでしょうか?
これと同様に質問「グローバル化は敵か味方か?」も無意味です。

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< 2. ?減税と?増税の結果 >

現在起こっているグローバル化の弊害の根にあるもの
この連載で既に見た世界や日本で起きている格差の拡大と第26話のヘッジ・ファンドや多国籍企業の暗躍との間には通じるものがあります。

今の世界経済の動きを簡単に見てみましょう。
日本の企業家と労働者は必死になって輸出力を高めました。
やがて経済力が向上し円高になり輸出産業はコストアップに苦しみ始めます。注釈1
これは競争相手国も同じです。

すると何処かの国が、禁じ手を使い始めます(まだ違法行為ではありません)。
それは産業の競争力強化の為に行われた大銀行や巨大企業への合併、大減税、賃金抑制、公害防止の規制緩和、為替操作などです。
これと並行して国は安直な景気浮揚策にも手を染めて行きます。
一昔前までは公共事業(土建工事)でしたが、現在は世界を駆けめぐる膨大な通貨発行(信用創造)です。
これらが相俟って、経済的な悪弊が広がっている。
これらの手法の多くは大国にとって有利です。

いつの間にか各国が競争に曝される中で、悪貨が良貨を駆逐するように、悪弊が広がっていったのです。

それではどうすれば良いのでしょうか?
上記への対策は一つしかありません。

世界が自由競争を行いながら最小限度の規範を守ることです。
これを1970年代までは欧米先進国で出来ていたのですが、現在は一国内では不可能になりました。
ピケティは格差を防止するために資産への累進課税を、抜けがないように世界が協力して行うことが必要だとしています。

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世界は協力することが可能だろうか?
少し歴史を振り返ってみましょう。

紀元前2千年紀のハムラビ法典に、奇妙な法文がありました。
「商人が外国で奴隷を購入し帰国した際、その奴隷の元の所有者が現れ、それが事実であれば、同国人の場合は開放しなければならない。」
詳細は不明ですが、少なくとも領域外の人の権利を認めている初出の法律かもしれません。

紀元1世紀頃の「ロードス海法」、後の「ローマ法」にも、領域外の権利を認めた法文があります。
「難破船の人を救助し、積み荷を持ち主に返却すべき」
実際には略奪があったでしょうが、古代ギリシャ時代から議論されていた問題です。
そこには取引の公正や航海の安全を図ることによって、他国との商業や交易を促進する目的があった。

つまり、古代社会ですら、自国を律することにより他国間との発展を企図していたのです。

現代の私達に、出来ない理由はないはずです、智恵は必要でしょうが。

次回は、最終稿の予定です。


注釈1.基本的には国内産業を守るために輸入規制をすることが問題で、他にも円高を防ぐ手はあるが、費用発生とインフレの問題、また外国からの非難がつきまとう。


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2015年06月17日

ピケティの資本論 27: グローバル化を越えて 2

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< 1. 24000年の時を越えて >

前回、グローバル化の弊害を見ました。
今回、グローバル化の流れを見ます。


グローバル化の流れ
「グローバル化」とは活動や視点がより地球規模に広がって行くことです。

グローバル化は人類史と共に始まりました。
連載「原初美術の誕生」「仏像を巡って」「病と医術の歴史」で、文化や文明が地域や国を越え、触発と融合を繰り返しながら発展して来たことを見ました。
ビナース像や壁画のモチーフに始まり、宗教と神像の造形、医術や薬物に至るまで、まったく他の影響を受けず独自に発展したものを挙げることは困難です。
これはあらゆる発展、科学、言語、法、思想、芸術、政治制度に至るまで同様です。
その原動力は、交易、征服、移住、布教、より良く暮らす為の情報収集でした。
それは10万年の時を越えて、今も地球全域に広がりつつあります。


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< 2.世界の貿易拡大傾向 >

現在はどうでしょうか
特に、ここ半世紀、世界の貿易依存度は10%から30%まで増大している。
これは世界の経済を活性化させ、人々の生活を豊かにさせているはずです。
これに連れて、世界はあらゆる分野、政治、軍事、経済・金融、環境で、保護や救済を協同するようになりました。
その代表例が、国連やEU、ASEAN、アフリカ連合、COPなどです。
その背景には、経済交流と平和への希求、さらに情報通信革命がありました。
これら総べてグローバル化の結果とは言えないが、これ無くしては成し得なかっただろう。

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< 3.COPの気候変動枠組条約 >

そうは言っても
人々や国家はグローバル化を無条件に受け入れて来たのでしょうか。

人々が外部と遮断する道を選べばどうなるでしょうか。
その顚末を、一部の先住民に見ることが出来ます。
隔絶された地に住むことは、彼らにとって侵略を免れる最善の方法でした。
しかし、最後に、彼らは著しい文明の差を突きつけられることになりました。
その彼らも元を正せば、約1〜3千年前には同じ文明を共有していたのです。

国が異国からの文物流入を嫌い、経済的・軍事的防御の為に国交を断絶したりすることはありました。
例えば、中国の明時代の海禁政策、日本の江戸時代の鎖国、1929年の株価大暴落に端を発した各国の保護貿易がありました。
明の政策は、密貿易と倭寇の隆盛を招いた。
日本の政策は、社会の混乱を防いだかもしれないが、文明の後退を招き、明治維新へと向かわせた。
1929年の場合、部分的な禁輸にも関わらず世界経済に大収縮を起こさせ、恐慌をより悪化させた。
特に貿易依存度が高まっている現代ではグローバル化の反動は非常に危険です。

1990年代のソ連邦やユーゴスラビア連邦の崩壊も同様な動きで、現在EUが取り沙汰されています。
反動は非常に起きやすく、弊害は大となります。


ここで見逃してはならない重要な事があります
人類は、紛争を防止し互いの権利を守る為に法(規範、規制)を作って来たのですが、その適用範囲を拡大させて来たという事実です。
初め、法の適用範囲は部族単位でした
やがて法は国家単位となり、やがて5世紀ほど前から国家の連合、今は地球規模で適用するようになりました、これはまだまだ脆弱ですが。

人類が等しく一人ひとりの安全(経済、軍事、人権)を守る為には、法のグローバル化は絶対に欠かせないなのです。

次回に続きます。





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2015年06月15日

ピケティの資本論 26: グローバル化を越えて 1

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< 1. 2013年、スペインのゼネスト >

今まで、社会変革の鍵を握る中間層の立場を見てきました。
これからは、最大の障壁「グローバル化」に対する意識を見て行きます。

はじめに

問題はグローバル化によって世界が一つになることではありません。
問題は、それを積極的に利用し利益を得る人と、国内に閉じ籠もりその弊害に無関心な人に分かれることにあります。
これで事が済めば良いのですが。

ピケティは格差の是正に世界的な課税が不可欠としています。
しかし、多くの人は「世界的な・・・」と言われると、尻込みをするか、よそごとと考えてしまうのではないでしょうか。
まして、現状で順風満帆な実業家やエコノミストは、ピケティの提案を一蹴することでしょう。
その提案が重要であればあるほど・・・。

大事なことは、グローバル化による弊害と恩恵を知り、我々が如何に対処すべきかを問うことです。


グローバル化は悪か?
いくつかの弊害の代表例を見ておきます。

1. ヘッジファンドなどの暗躍: 大量の投機資金が世界中で弊害を撒き散らしている。
この連載の18〜20話で取り上げた、投機家ジョージ・ソロスが起こしたアジア通貨危機が代表例です。
投機による必需品や投機商品の値上がり、逆に株価や為替の暴落による大量失業や倒産、福祉予算の削減などが国民を苦境に追い込みます。

2. バブルで巨大な利益を上げる銀行: 金融緩和策が莫大を富の偏在と次の破産を生む。
2009年、欧米の銀行上位20行の利益は約1000億ユーロ(13.5兆円)だった。注釈1
この年は世界金融危機の真っ最中で、EUの実質経済成長率は最悪の−4.5%になり、翌年には欧州金融危機が始まりました。

この利益の源は、金融危機の際に、欧米の中央銀行(ECBとFRB)が超低金利で民間銀行に2兆ユーロ融資したことに始まる。
この資金を平均4%の利ざやで1年間又貸しするだけで民間銀行は上記利益の80%を手に入れることが出来た。

問題は、有り余る資金が際限なく貸し出され、やがてバブルと崩壊が始まり、残ったのは破産と借金で苦しむ人々だということです。
町の闇金融の悪質さは問題になるが、借り手の南欧(スペインやギリシャ)の悲劇は、それと比べものにならない。
これがほぼ十年毎のバブル崩壊の度に繰り返されている。



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< 2. 多国籍企業 >
上の写真: 多数の欧州企業がバングラデシュで生産している。
下の写真: 多国籍企業がフィリピンのバナナ栽培に関わっている。

3. 多国籍企業の暗躍: 大国を後ろ盾に後進国を牛耳り世界を貪る。
1984年、インドの米国企業の化学工場で有毒ガス流出事故があり、数千人が無くなった。
インド政府は経営陣を起訴しようとしたが、米国国務省は引き渡し要請を拒んだ。

巨大な多国籍企業が後進国に、都合の良い契約を押し付け、政府要人を賄賂で手なずけることはよくある。
そして、その国から資源は奪われ、国民は劣悪な環境で働かされ、国土は環境汚染が蔓延することになる。

まとめ
グローバル化の弊害を挙げるときりがない。
この問題は主に大国の経済と金融活動に端を発しており、それが遠因になって各地の紛争すら生んでいる。
大国の武器産業の隆盛も、紛争に油を注ぐ結果になっている。

次回も、この手に負えそうにないグローバル化について見ます。


注釈1: 2009年の為替レート1ユーロ135/円で計算。




 
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2015年06月13日

ピケティの資本論 25: 私達の心に潜む厄介な心理 3 

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< グラフ1.日本の所得階層別の所得推移、by「The World Top Incomeがs Database」>

前回、米国の所得格差の状況を見ました。
今回は、日本の中間層にとって所得格差はどれほど進行しているかを確認します。


グラフ1の解説

所得階層を上位から0.01、0.1、0.5、1、5、10%、また下位から90%に分けている。
1980年の平均所得をそれぞれ100としている。
人口の90%を占める下位90%(赤線)の所得が全期間で19%低下している。
逆に、上位0.01%から10%の所得は総べて増加し、最上位層0.01%に至っては72%増加している。
この傾向は前回検討した米国と同様です。

それでは日本の中間層はどうなっているのだろうか

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< グラフ2. 様々なHPより借用したグラフ >
解説: この三つのグラフは日本の所得低下や格差を示すものです。
しかし今一つ、格差の全体像が見えて来ません。

一番下のグラフは階層毎の人口がわかるので少し全体像が見えます。
一番下のグラフの凡例
所得階層  グラフの線       所得範囲
最貧困層    黒実線          年収100万円未満
貧困層      赤破線   年収100万円以上200万円未満
下流階層    緑実線    年収200万円以上400万円未満
中流階層    青破線    年収400万円以上800万円未満
上流階層    紫実線   年収800万円以上1500万円未満
富裕階層  ピンク破線             年収1500万円以上

これによると下流階層と中流階層の人口が最も多いことがわかります。
さらに、中流階層以上の人口減少分が下流階層以下の人口増と釣り合っている。
このことは上位所得層が次々に下位へと没落している可能性を示す。


格差の実態は如何に
私が国税庁のデーター「1年勤続者の給与階級別給与所得者数」「1年勤続者の給与階級別平均給与」を使って下記のグラフを作成しました。注意1

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< グラフ3. 給与階層20%毎の平均給与推移 >
解説: 1995年を100としています。
最上位層は第5分位(紺線)、最下位層は第1分位(赤線)です。
グラフ横の凡例に、各階層の1995年と2013年の平均所得と、その騰落率を記しています。

このグラフで目につくことは、第2分位(ピンク線)の所得低下が第1分位より大きいことです。
これはデーターが1年以上の勤続者に限定していることが大きく、すべてを対象にすれば妥当なグラフになるでしょう。注意2.

しかし、ここでも米国と同様に、全体に低下傾向の中、最上位層は回復が顕著で、階層が下るにつれ、低下は歴然としています。
日本の中間層(第3、4分位)はまだ米国ほどには酷くないが、第2分位の低下が行く末を暗示している。


まとめ
現状では、日本の中間層は米国の中間層ほどには危機感を持たないだろう。
しかし、日本は今、米国流の金融、経済、税制に急速に近づきつつある。
したがって、やがて格差が開いて行く中で、中間層も没落を余儀なくされるだろう。
賢明な中間層は、どのぐらい格差が深刻になれば危機感を持つことになるのだろうか?

次回に続きます。


注意1: 全給与所得者を毎年、5分割する為に一部の数値を補間計算しています。
またインフレ分を控除し実質所得に修正しています。

ここで不思議なことに気づきました。
私はインターネットで最適なグラフを探したのですが見つかりませんでした。
不思議なことに、海外の格差を示すグラフにはわかり易いものがあるのですが、日本の格差用には皆無なのです。
日本政府がそれを隠しているとは思いませんが、残念です。
ピケティは、格差の問題意識が低い国はデーターに不備があると指摘しています。

注意2: 不定期のアルバイトなどを算定すれば第1分位の年間所得はもっと低くなる。しかし下落率は、米国に比べ大きくない可能性があります。
それは米国の最低賃金が実質低下しているが、日本は上昇しているからです。

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2015年06月11日

鳥取旅行 6: 浦富海岸

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今日は、鳥取旅行の最後で、日本海の海岸を一部紹介します。
ここは東西100kmにわたる山陰海岸ジオパークの西の端です。



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< 2. 今回の走行ルート、地図の上が北方向 >
上の地図: 黄色線がドライブルートで、東西約70kmになります。
下の地図: これは上図の赤枠を拡大した地図です。
写真は黄色線、東の浦富海岸から西の網代漁港の間、約3kmの範囲内で撮影しました。
写真3,4,5は、時間順に並んでいます。

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< 3. 浦富海岸 >
写真は浦富海岸の西側で撮影したものです。


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上の写真: 左側に白い車が見える所が道路で、海岸沿いを走っています。
この道路には、要所要所に駐車場が設けられており、そこからの眺望が素晴らしいです。
写真はここから撮りました。

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上の写真: 岩の島の向こうに遊覧船が一隻見える。
これは網代港から発着している浦富海岸の島巡り遊覧船だろう。
下の写真: 網代港に入る峠から港を見下ろした。
対岸遠くに、鳥取砂丘がおぼろげながら見える。

あとがき
今回の旅行は、花巡りを省き、雄大な山と山岳寺院、海岸の観光に絞りました。
それと、山陰ならではの海の幸と温泉を楽しみました。
天気が良かったので、爽快な旅になりました。

今回の連載中に、米国とロシアの方から大山と三徳山三仏寺の問い合わせがありました。
海外の人々に、日本の良さを知ってもらえてブログ冥利に尽きます。

今後、以下の旅行を予定しています。
8月のクロアチア含むバルカン5ヵ国、9月の中国の桂林、10月の長野県。
楽しい旅行記を掲載したいと思っています。

ありがとうございました。


ラベル:自然 観光 旅行
posted by 学 at 10:32| 兵庫 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月09日

ピケティの資本論 24: 私達の心に潜む厄介な心理 2 

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< グラフ1. 日本、民間給与所得者の給与階級別人数の推移、国税庁資料 >

前回、未来を見ない中間層の心理を見ました。
今回は、中間層にとって格差はどのぐらい進行しているかを見ます。


はじめに

国税庁のデーターに基づくグラフ1を見てください。
グラフにおいて、所得400万円以下の人々、特に最下層(200万円以下、赤線)では大きく人数が増えている。
逆に、600万円以上の人々の人数は減っている。
しかし、最上位層(1500万円超)の人数だけが増えている。
一方、中間層(400万円以下、500万円以下)はほぼ横這いです。
ちなみに日本の平均年収は、1997年(平成9年)に最高467万円に達し、その後低下し続け、2008年(平成20年)に430万円になった。

皆さんは、このグラフから格差の状況をどのように把握するだろうか?

「低所得層は拡大しているが富裕層も減り、中間層も変わらないので日本の格差は進行していない。」
または
「低所得層は拡大しているが、中間層の私は安泰なようだ。」
多くの方は、おそらくこのように解釈するでしょう。

先ず、米国の格差の状況を見てから、正解を示します。


米国で起きていること



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< グラフ2.上位10%の所得階層の総所得に占める割合、「21世紀の資本」より >
解説: 1950年代に比べ、富裕層(トップ10%)のシェアは英米2ヵ国で急増し、独仏2ヵ国で横這い、スウェーデン(北欧)は一度低下し、現在戻りつつある。

これは米国の中間層と低所得層にどのような影響を与えているのだろうか?

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< グラフ3. 米国、各20%の所得階層毎の所得推移、日本の内閣府資料 >
解説: (1)は名目所得のグラフで、(2)はインフレを除いた実質所得のグラフです。
これから(2)のグラフを見ていきます。
第5分位(青線)が最上位20%の所得階層で、第1分位(青破線)が最下層20%です。
最上位層だけがリーマンショック後、所得を急速に回復中です。
他は、すべて所得が低下し続け、第4、3、2位の所得階層の所得低下は4年間で6〜10%です。
階層が下がるに連れ、低下が著しいのが見て取れます。

グラフ2より、同じ時期の最上位10%のシェアは1%未満の増加に過ぎず、さらに過去40年間のシェアは15%(33―48%)に上昇しています。
つまり、最上位層(第5分位)以外の所得は、過去40年間でグラフ3の(2)を遙かに凌ぐ低下があったと推測出来ます。

まとめ
重要なポイントは、格差が進行している時、最上位層だけが急激に富を増やし、それ以外はすべて富みを減らしていることです。
この構造は、現在の先進国にほぼ共通の金融・経済システムによるものです。

次回に続きます。


補足1. 引用したグラフで気づいたことが2点あります。
一つは、グラフ3の(2)の実質所得が格差の進行状況をよく示していることです。
いま一つは、日本のグラフ1に比べ米国のグラフ3の方がはるかに格差がわかりやすいことです。

補足2. 日本と米国の心理の違いについて
心理学調査によれば、米国人は日本人に比べ楽観的であるとされています。
楽観的であることは、失敗を恐れず未来に向けて挑戦的です。
一方、悲観的であることは、慎重で保守的です。
この両方の心理は、人が自然に適応する為に必要だった。
厳しいが広大な環境では、果敢に挑む前者が有利でした。
豊かではあるが限られた環境では、現状維持の後者が有利でした。

しかし、社会自体が徐々に疲弊し始めている時の対応はどちらが有利なのでしょうか?
どちらにとっても、困難な対応を迫られることでしょう。


posted by 学 at 08:52| 兵庫 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連載完 ピケティの資本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする